第2回 「各地の復興計画の策定状況と課題 ~石巻・名取・塩釜~」きたかみ震災復興ステーション
【講演題目】 「各地の復興計画の策定状況と課題 ~石巻・名取・塩釜・その他…~」
【講演者】 東北大学准教授 姥浦道生
【日時】 2011年 10月21日(金) 13:30~15:00
【場所】 きたかみ震災復興ステーション
【参加者】 東北地洋整備局、北上市役所、オブザーバー、その他
〇はじめに
東日本大震災後、石巻市、名取市、塩釜市、宮古市など東北地方各地で、復興計画に携わってきた。
今回は、震災発生から現在にかけての、復興計画の策定状況について紹介すると共に、その課題について取り上げたい。
〇石巻市での復興計画
石巻市は合併したまちであり、主に海岸部と平野部の二つに分かれる。特に海岸部は川に沿った形で栄えた。
ロードサイドの中里地区、大街道地区には商業が集中し、店舗が栄えてきたことで知られる。建物を新しく建て替えることに力を置いてきたため、歴史的建造物はあまり存在しない。
石巻市の注目すべき点は、川沿いに本来存在するはずの堤防がない、ということである。そこからうかがえることは、昔から市民は川と近く、親しみのある生活を送ってきたこと、津波などの水のリスクを承知したうえでの生活を送ってきたこと、ということであろう。
しかし今回の震災により、石巻市には堤防を設置する動きが出ている。その堤防の高さにしても、行政と市民との間ではせめぎ合いがある。3mか、7mか、10mか…。「ある程度のリスクを受け入れなければ仕方がない。歴史性、風土性を守りながら、迅速に復興させていかないと、器としての安全な街ができても、中身としての街は死んでしまう」
これまで「堤防の高さ体験会」を開催するなど、市民の勉強会も重ねてきたが、先行きはまだ長い。
〇名取市での復興計画
名取市は人口約72,000人、そのうち今回の震災での死者、行方不明者は合わせて1,000人である。特に、漁港が栄えてきたユリアゲ地区の被害は甚大であった。
震災当初から復興計画に関わってきたが、九月にアンケートを実施した。そこからは、住民の時間による意向の変化がみてとれる。当初は自分の住んでいた土地に「戻りたくない」という想いであったものが、最近は「戻りたい」「戻らねば」という回答へと変化している。
さらに、世帯内においては意見の相違がみられた。自分の住んでいた土地に「帰りたい」と回答したのは3割で、それは主に高齢者であった。残りの7割である若年層は、「帰りたくない」と回答している。高齢者と若年層で、意見の相違が生じているのが現状だ。
〇塩釜市での復興計画
塩釜市は、島が堤防の役割をしていた。そのため今回の震災では、他地域に比べて死者が少なかった。
しかし高齢化率は5割を超え、10年後には集落人口が半減するといわれている。するとその土地にははたして誰が住むのか。仮に、100~200年は耐えられるという公営住宅を建築するとしても、その必要性はあるのか、など議論の只中である。
〇まとめ
①ピンチはチャンス
これを機に、歩いて暮らせるまちづくりを推奨したい。
②「らしさ」の再発見
「何もなくなったけれども」=「何もなくなったからこそ」と切り替え、使える資源を活かしていくべきである。例えば石巻市でいうと、水を活かした景観が存在するであろう。
③安全と安心の差
どこまでの安全性を追求すべきか。100%のリスクフリーはありえないのだ。ここに、合意形成の難しさがある。
④トレードオフの関係性
技術的解決が困難な場合もある。
⑤低いプライオリティ
震災「後」に失われるものもある。
⑥使い道のない土地の大量発生
すべての土地を、震災前の価格で買い取ることは不可能である。
⑦再開発「ブーム」
しかし、今こそコンパクトシティ形成を、東北から発信すべきである。
⑧開発抑制につながらないコントロールのしくみをつくる必要性
〇最後に
①東北大学の復興計画
大学構内も被害を受けた。改築工事に着手している。
②わが家の復興計画
「うちって母子家庭だね」「……」
〇質疑、意見
○宮崎孝雄部長
① 「千年に一度」が、もしかしたら明日かもしれない。そのため広域調整を、県がしっかり担うべきだ。
石巻市の低い土地の、区画整理はどのような状況にあるのか。堤防のあり様により、区画整理の仕方が異なるはずである。
② なぜそこに住むのか? その土地にメリットが存在し、だからこそ守っていく、という想いがあるはずである。しかし惹きつける魅力がなければ、守る気にもならない。どのようにして魅力をデザインしていくか、考える必要があろう。
〇高橋潤さん
① 石巻市雄勝町の人口は今後、半減するとの見方もある。だからこそ、コミュニティ単位での再生が求められるであろう。
→(姥浦氏)
「あじさい型」の花びらとして各地域を考えると、その大きさは益々小さくなっていくであろう。そのため花びらの色などといった、質がどうあるべきかという議論が必要だ。
② 「らしさ」を徹底的に使い切る必要がある。次第に寂れていく街に住んでいくことの課題が生じるであろう。
→(姥浦氏)
中心市街地としてどのように考えるか。マーケティングに出て行く必要もある。
〇北上市 小原氏
まちづくりには、住民の意見が必要である。しかしそれだけでは進めることができない。ある程度の地点で、専門家が何かを示さなければならないであろう。そうした際、何を示したいか。
→(姥浦氏)
最終的には、政治が決定しなければならない。我々は議論するための情報を提示していく必要があると考える。後に互いが拗れることがないよう、土俵を同じにして合意形成を図るべきだ。しかし、示そうにも予算がたっていないため、示せないという現状がある。
以上
1.主な参加者 2. 「堤防高さ体験会」の説明